良い夢を
「遅くなってしまいましたね…」
窓から外を見ると、すっかり暗くなっている。
予算の調整で各部活を回っていたら、思いのほか時間が掛かった。
ついさっきまで西日が差していたのに、月が随分高い位置まで昇っている。
一通り終わらせる予定だったのだが仕方がない。
細かい作業は明日にして、書類だけ置きに生徒会室へ戻ることにした。
「おや…」
生徒会室の前まで来ると、少しだけ開いたドアから明かりが漏れている。
こんな時間まで誰か残っているなんて…。
ドアを開けると、机の上に散らばった書類と、ソファで眠るかわいらしい姿が目に飛び込んできた。
「やはり…あなたでしたか…」
実は、ドアを開ける前に彼女の姿が脳裏をよぎっていた。
こんなに遅くまで残りそうなのは彼女だろうなという予測と、彼女だったらいいなという期待。
起こさないようにそっと書類を片付ける。
余程疲れていたのだろう。
こちらの様子に気付くこともなく、すーすーと寝息を立てている。
無防備な寝顔は普段より更にあどけなく、本当にかわいらしい。
思わず抱きしめてしまいたい衝動に駆られた。
「う…ん…。」
手を伸ばしかけたところで、彼女が寝返りを打つように身じろぐ。
小さくて細い体は触れたら壊れてしまいそうな気さえした。
少し逡巡した後、頬に軽くキスをする。
「今日はこれで許してあげます…ただし、眠り姫が目を覚ますまで側にいさせていただきますよ」
おやすみなさい、良い夢を…
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〜姫ってたまらないものがありますよね。