放課後××
「月子は、ココアでいいよね?」
そう言うと郁はスタスタと歩いていってしまった。
いつもの放課後。
保健室に来てみると琥太郎先生はいなくて、代わりに郁がソファでくつろいでいた。
特に今日の仕事はないということだったから、久々に部活に顔を出すか、明日の課題をやるか迷っているうちに
お茶に誘われてしまった。
いつものお茶でも淹れようとしたらちょうど切れてしまっていて、そこで郁が買ってきてくれることになったんだけど…。
「紅茶がよかったかも…」
さっき教室で錫也のクッキーを食べたから、紅茶の方がよかったかもしれない。
郁は私の話を聞く前にすぐに出て行ってしまったしココアも好きだしいいかと思いながら戻ってくるのを待つ。
「お待たせ」
しばらくして、保健室のドアが開けられる。
郁の手には紅茶と、ココア。
そっか、郁って紅茶が好きなんだよね…。
「はい、月子の」
郁はソファに腰掛けると、ココアをくれた。
「あ、ありがとう…」
何となく紅茶がいいとは言い出せなくて、そのまま飲み始める。
他愛ない話をしつつ、何とか半分くらいまでは飲んだんだけど、やっぱり、甘い。
ちらっと、郁の方を見る。
紅茶、いいな…。
「…どうかした?」
私の視線に気付いたのか、郁が覗きこむようにしてこちらを見る。
「な、なんでもないよ!」
思った以上に距離が近くて、咄嗟に下を向いてしまった。
「…ふーん」
さっきより、心なしか座っている位置が近い気がする。
意識した途端、ドキドキしてきた。
鼓動を誤魔化すようにココアを飲む。甘くてかえって喉が渇く。
ちっとも治まらないし、だんだん顔も熱くなってきた。
「これ、欲しいんでしょ?」
「…え?」
見せびらかすように紅茶の缶を私の前でチラつかせる。
やっぱり、バレてた…。
「はい、交換」
「…え?」
スッと私の手からココアが取られ、代わりに紅茶が手の中に収まっていた。
郁だったらもっと意地悪してくると思ったのに随分あっさりで、拍子抜けしてしまう。
でも、せっかくくれたんだし、飲んじゃおうかな。
「あ、ありがとう」
厚意は素直に受けた方がいい。
というわけで、紅茶を飲むことにした。
少し冷めていたけど、それなりにおいしい。
つい、ごくごくと飲んでしまう。
「ねえ」
「なあに?」
紅茶のせいで恥ずかしさを忘れて、そのまま顔を上げてしまった。
初めよりずっと近くに郁の顔がある。
「これ、間接キス」
「…!!!!」
危うく紅茶を噴きだしてしまうところだった。
確かに間接キスだけど本当のキスだってしてるし、今更照れることじゃないのに
改めて指摘されると、すごく恥ずかしい。
ほ、本当のキス…!!!
「…っげほっ…!」
自分の思考で再び紅茶を噴きだしそうになって、むせ込んでしまった。
「どうしたの?大丈夫?」
すかさず郁が背中をさすってくれる。
明らかに楽しんでいる声だったのは、気にしないことにした。
「…けほっ…郁が…変なことっ…言うから…っ!」
「僕?何も言ってないよ?」
「…っ!!!」
さすっていただけの手が、徐々に私の体を抱き抱えるように背中に回されて
いつの間にか私は郁の腕の中にいた。
何となく悔しいけど、今は体を預けるしかない。
大きな掌が、心地いい。
「月子、本当のキス、しようか?」
「…んっ」
言われた時には唇が塞がれていて、聞いた意味がないなと思った時には、体がソファに沈められていて
天井が見えた瞬間、私は完全に目を閉じた。
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タイトル考えるのが苦手でどうしようもないです。
もうちょっと根性あったら放課後×××にしたかったです。
けいおんでそういう同人誌ありそうですね。